印刷産業の規模間格差について
印刷産業を営む企業には小規模事業所が多く、特に3人以下の事業所が最も多くなっています。一方で、業界最大手の大日本印刷凸版印刷の2社の売上高が突出しており、グループでの売り上げは両社で3兆円を超えています。
印刷産業が独自に行っている経営調査には、全日本印刷工業組合連合会の各都道府県工組推薦モニター企業を対象とした「印刷業経営動向実態調査」、JAGAT会員企業の印刷会社を対象とした「JAGAT印刷産業経営動向調査」があるが、財務省「法人企業統計」や経済産業省「企業活動基本調査」、中小企業庁「中小企業実態基本調査」、東京都産業動労局「東京都中小企業業種別経営動向調査」でも印刷産業の経営実績を調査している。6つの調査結果と上場印刷業28社の2010年度個別業績を比較してみると、上場企業は生産性や安全性に優れていることがわかります。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」で、規模別の労働実態を見ると、製造業全体では規模が大きくなるにつれ労働時間は短くなっているが、印刷業会では小企業が最も短く、大企業ほど超過時間が長くなっています。
印刷産業の年齢階級別賃金と労働者数を見ると、大企業では45~49歳層の賃金が最も高く、中企業は50~54歳、小企業は55~59歳と年齢が上がっていきます。大企業では管理職層の若返りが図られており、65歳以上の労働者はほとんどいない事が分かります。一方、中小企業では高齢者も戦力として活用されています。
さらに厚生労働省「毎月勤労統計調査」で2010年度の労働実態を見ると、印刷産業は製造業に比べて規模の格差は小さいが、全体に低い水準にあり、特に賞与は製造業の6割以下となっている。一方労働時間は、製造業が前年度より5時間も増したことからその差は縮まったが、それでも印刷産業が7.7時間長くなっています。
雇用の流動性を示す労働異動率は、製造業では入職率1.19%、離職率が1.21%で、規模別でも大きな差はない。ところが、印刷産業では大企業は入職率が高く、採用活動が活発な状態を示しているが、中小企業では離職率が高く、ノウハウの蓄積が困難になっていることや、労働力不足が懸念されています。