東日本大震災が印刷業界に与えた影響
2011年3月11日におこった東日本大震災は、印刷業会にも大きな被害をもたらしました。宮城県印刷工業組合の調べでは、沿岸地区(石巻・塩釜・気仙沼・南三陸)の22社のうち、社屋が消失・全壊となった印刷会社が9社、設備の冠水を受けた会社が17社の他、人的被害を受けた会社もありました。早期復旧不可としたのは19社に及び、津波の影響を受けなかった内陸部社でも設備の損壊、建物の一部破損や亀裂など大きな被害を受けました。
ようやく復旧の目処がつき始めた2011年4月7日に震度6の大きな余震があり、設備に対する直接的な被害はむしろこの時の方が大きかったと言われています。3月11日の地震は緩やかな横揺れが長く続いた後、大きな揺れがきて、立っていられない程であったのに対し、4月7日の余震は、直下型の縦揺れがきて、機械が飛び跳ねるように大きく揺れたそうです。仙台市印刷工業団地にある印刷工場では、印刷機のアンカーボルトが外れ、免震用の横ズレ防止装置も動いてしまったそうです。
各県印刷工業組合や全日本印刷工業組合連合会が調査した被害状況を見ると、やはり岩手の気仙沼地区(大船渡、陸前高田、釜石)の被害が大きかったようです。福島では社屋工場の一部破損、設備の移動など被害が目立ち、茨城や千葉でも破損や印刷機械が動いてしまったり、周辺機器やPCの故障などの被害が多かったようです。
全国的に見ても、印刷の発注キャンセルや物理的に印刷できず延期となった直接的な影響が多く見られました。メーカーの迅速は対応しましたが、材料の調達難、電力不足、何より印刷需要の低迷が続きました。
また、被害が大きかった日本製紙の石巻工場を始め、製紙工場の被害が深刻でした。出版用紙が用意できず、雑誌の発行休止や発売延期という事態にもなりました。またインキ工業会からは「印刷インキの生産出荷に関する危機的状況」という名声が発せられました。
内閣府が公表した被災7道県を対象にした試算では、直接被害額は約16~25兆円となり、これは阪神・淡路大震災で国土庁が試算した約9.6兆円を大きく上回りました。
印刷業界は、建物や設備の修繕に掛かる費用だけではなく、データの紛失や操業停止による被害などもあり、大きな打撃を受ける事になりました。
また、印刷はあらゆる産業と関わっているため、顧客とその先のエンドユーザーが被災状態にあっては印刷の需要は回復せず、多くの会社が廃業へと追い込まれました。