生活関連産業の中での印刷業
印刷の最大の特徴は「水と空気以外なら何にでも印刷できる」事です。雑誌、書籍、新聞などの出版物はもちろん、ポスター、チラシ、カタログなどの商業印刷物、商品のパッケージなどの包装印刷物、名刺に代表される事務用印刷物、他にも株券や商品券、カードなどの証券印刷物、建装材や布地に印刷する特殊印刷物まで、印刷物は日常生活に欠かせない物です。その他にも液晶カラーフィルターや電子回路、医療機器など、ありとあらゆる物に印刷の技術が適応されています。
印刷産業は、日本標準産業分類の中では「製造業」の中の「印刷・同関連業」に分類され、そこからさらに「印刷業」「製版業」「製本業、印刷物加工業」「印刷関連サービス業」に細分化されています。
工業統計調査の分析では、「製造業」を「産業3」(生活関連型産業、基礎素材型産業、加工組立型産業)に分類し、印刷・同関連業は「生活関連型産業」に位置します。
「生活関連型産業」には食料品製造業、飲料、たばこ、飼料製造業、繊維工業、家具・装備品製造業なども分類されていますが、印刷産業の特徴として、受注産業である事が挙げられます。印刷産業以外の生活関連産業では、マーケティングに基づき計画的な製造・供給が行われているが、印刷物は仕様や数量、納期などを発注者の指示によって決められる場合が多くあります。
受注型産業は流通や在庫などの点では有利なところもありますが、繁閑の差が大きい場合には余剰人員や過剰設備という問題が起こります。また、印刷技術の進歩によって品質に差が出にくくなり、価格で印刷業者を選ぶ傾向が強まっています。
印刷業会はかつては不況に強い産業と言われていましたが、広告市場や出版市場が大幅に縮小する中で、メディアの多様化、マーケティング手法の高度化、紙メディアから電子メディアへのシフトもあり、価格の下落が起こっています。
印刷機の生産性向上により、配給能力が印刷需要を上回った事も理由のひとつです。